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誰のための決断なのか【灯夢想家】

先日救急搬送した入居者様の話。

誤嚥を起こしやすく食事はミキサー食を提供していた入居者様T氏。夕食を終えた19時頃から血中酸素濃度の低下がみられ、ゴロゴロ何かが絡んでいる様子も見受けれられる。主治医に状況を報告し、吸引の指示あり吸引をするもなかなか酸素濃度があがらず、80%をきる状態もみられる。本人は受け答えには「はい」と返事をし、意識はあり呼応反応もある。御家族に状況を報告する。

T氏の御家族は入居当初には積極的な治療を望まれていましたが、95歳という年齢と、認知症の症状のために日常生活のすべてに介助を要する状況に、御家族も本人にとって、積極的に治療をするのが本当によいのか考え改めていました…。願わくばホームで最期を迎えることを考え始めた御家族様…その矢先の今回の状況でした。

主治医の判断としては「本人が苦しそうなら救急搬送をすればよい」とのこと。御家族は救急搬送を望んではいなかったのですが、主治医は見に来ないとのことだったので、御家族自身でそのまま何もしないか、救急搬送をするか判断をしないといけない状況にあり…本人の苦しんでいる様子をみて、本人が「そう少し頑張って」みるかとの問いに「はい」と返事をしたとのことと、そのまま何もしないとの選択ができず救急搬送となりました。(救急搬送の現実:某Y病院とI病院は受入ができず、鹿児島大学への救急搬送となりました)

鹿児島大学に搬送されると「人工呼吸器を使用するか否かの確認をします」との事。ご家族は救急搬送をすることの意味を痛感したようです。延命も積極的な治療も望まないのであれば救急搬送をしなければよかった…あの時先生が来てくれて状態をみてくれたらそのままホームにいたかもしれないのに…と救急搬送を悔いた御家族様です。たまたま鹿児島大学の救急医がよい先生で、家族に囲まれ、慣れ親しんだ環境で最期を迎えることは本人にとって幸せなことである、との思いを理解して下さり、早く退院できるはずだったのですが‥‥

御家族の意向で1週間ほど入院が伸びました…。やはり救ってほしいとの思いも御家族にあるのでしょう。御家族の悩みを支えるのが介護の役割ではありますが、本人がどのようなことを暮しに望み、そのためにはどのような決断をするべきか…本人の意向に添い、本人の暮しを考えた上で決断してほしいものです。

02/05/2022 木瀬